1977年
素人だからこそできた、一人の声から生まれた下着
1970年代当初、女性用下着の素材はほとんどが合成繊維でした。中でもボディースーツは着ると固くて苦しく、汗を吸わないので、夏場はとても着ていられません。シャルレは下着の販売からスタートし、歩き始めたばかりの時期でした。
ある日お客さまから、「綿のボディースーツがあればいいのに」という切実な声が届きました。
季節は冬。創業者は雪の降る中、その1人の女性の声に応えるため、滋賀県彦根にある下着の縫製工場を、1軒1軒歩いて回りました。しかし、当時のシャルレは名もない下着会社であり、綿のボディースーツなど聞いたこともないと、まったく相手にしてもらえなかったのです。諦めかけていた時、唯一話を聞いてくれた工場で見つけたのが、自動車の天井に使われる内装用の綿生地。理想的な素材でした。
「これしかない。これでボディースーツを作ってくれませんか」と創業者が頼んだところ、「無理、無理。そんなもの絶対に売れませんよ!」と工場の担当者。「売れなくてもいいから作って欲しい」と何度も何度も頭を下げ、なんとか製品化することができたのです。
当時、自然素材の染色は難しく、色はくすんだベージュ。生地もぶ厚く、おしゃれさにはほど遠い見た目でした。それでも「着心地がいい」「毎日でも着ていられる」とのうれしいお声が沸き上がり、記録的なヒット商品となりました。
1人の女性のご要望に応えるための熱意と、着心地、素材へのこだわりから生まれたボディースーツ。下着づくりをはじめたばかりの素人だったからこそ、お客さまの声を受けとめ、従来の常識にとらわれることなく、今までにない商品を生み出すことができたのです。「デザインやカラーには好みがあるが、品質に好みはない」という、今に受け継がれているシャルレのものづくり精神の原点がここにあります。
写真:ボディースーツ(当時呼称:ポワレボディースーツ)